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財務情報には,ある時点の状態を表すストック情報と,ある期間内の動きを表すフロー情報があります。
キャッシュフローとは,文字通り,ある期間内におけるキャッシュの流入と流出を示すフロー情報です。
貸借対照表(B/S)に記載されているキャヅシュ(現金預金)の残高はストック情報であり,キャッシュフローではありません。
キャッシュのストック情報は,キャッシュポジションと呼ばれます。
キャッシュフローを理解するための第一ステップとして,投資案件の評価について考えてみることをお勧めします。
まず,投資した時点でキャッシュが流出し,それ以降,投資期間内にわたって,投資の成果(リターン)として,キャッシュが流入します。
また,投資するためには,その資金を調達する必要があります。
調達資金には使用料がかかりますが,その使用料を資本コストといいます。
そして,リターンとして流入するキャッシュの累計が,投資額の累計と資本コストを賄ってはじめて,儲けが出た,すなわち投資が成功したといえます。
このように,投資案件のキャッシュフローに基づいて,その採算性を評価することが,最も信頼性があると考えられており,グローバル・スタンダードになっています。
キャッシュフローは,「儲け」を測定するための重要なモノサシなのです。
第1章では,まず,投資のリターンとの関係について少し考えてみます。
そして,キャッシュフローとは何か,利益とはどう違うのかについて説明します。
企業における投資とは,将来の事業展開のために,工場の設備,コンピュータのハードウェアやソフトウェア,研究所の設備,事業会社などを買ったり,開発したり,建設したりする経済行為です。
また製品開発などに要したすべての人件費,設備購入代金,外部調査機関への支払,コンサルタント料等すべてを,その会計処理に関係なく集計して製品開発投資とみなすこともあります。
この考え方は,財務諸表の損益計算書(P/L)に当該経費が原価や費用として計上されようが,貸借対照表(B/S)に資産化(キャピタライズ)されて計上され(固定資産などとして計上され)ようが,製品開発に要した投資としてその現金での流出する総額を把握する考えです。
原価低減による利益増加であったり,新製品投入による売上増であったりと理由はさまざまですが,どの企業でも将来の儲けのため,投資活動を常に展開しています。
投資は株主資本(エクイティ)での調達か,銀行借入(デッド)で賄うかといったことと関係なく,資材・設備の購買やサービス対価に対する支払で発生した社外流出の現金(キャッシュ)のことをいいます。
社内の人間の労働に対しても,もしも彼らが投資活動に貢献したとすれば,彼らへの対価は支払給与として毎月現金で流出していますから,他の社外流出現金と同じとして考えます。
一方,投資に対するリターンを考えるとき重要となるのが,資本コストです。
資本コストとは調達した資金の使用にともない発生する費用です。
それが銀行借入であれば銀行への支払金利であり,株式発行による資金調達(エクイティ・ファイナンス)であれば,会社の株式に内包されるリスクを考慮した,株主の期待収益率のことです。
このリスクを考慮した期待収益率とは,第V章の(1)で詳しく説明しますが,ここでは次のように考えてください。
投資家としてある会社の株式を買うということは,それ以外の投資,例えばもっと安全な投資対象である定期預金をするとか,国債を買うとかといった他の選択肢を放棄してその会社の株式を買うということです。
そして投資対象のリスクによっては,多くの見返りがないと我慢できず,もしこの見返りがなければ他の投資案件に投資家が逃げてしまいます。
したがって通常は,企業が倒産すれば紙くずになる株式に対する期待収益率は,元本が保証されたり担保をとった借入金の金利より高くなります。
株主の期待収益率は,倒産リスクがない国債の利回りに,市場の平均リスク部分(マーケット・リスクプレミアム)と企業特有のリスク部分(係数)を上乗せして算出します。
そして,銀行借入金の税引後の金利と株主の期待収益率を,負債の額と株主資本の額で加重平均したものが資本コスト率となります。
これを英語では, WACC(Weighted Average Cost of Capital=加重平均資本コスト)といいます。
日本では,銀行借入コストの概念は財務コストとして一般的に認められているように見えます。
しかし,「銀行は雨が降ったら傘を貸してくれない」といわれ,本当に困ったからといってお金を借りているわけではなく,お付き合いで借りているケースも多いでしょう。
この場合は,銀行との付き合いから新しい事業や顧客を紹介してくれるというメリットを,借り手は受けます。
つまり,金利は財務コストというより,販売費の性格が強くなってしまいます。
営業外費用の営業費用への付け替えが,発生していることになります。
一方日本では,株主資本のコスト(エクイティ・コスト)という意識が大変希薄でした。
赤字になれば,配当は払う必要のない項目であり,利益が出ていても,額面に対して何%と計算された低水準の配当しか支払ってきませんでした。
つまり,エクイティ・ファイナンスはコストゼロの資金調達と見られていました。
資本元本および外部投資家に対する支払義務である資本コストを回収するための現金収入が,リターンとなります。
具体的に,投資によって生まれる売上増に伴う現金での収入増。
コスト削減による現金の社外流出の減少,在庫削減や売掛金回収スピードの向上による現金流出減等のベネフィットをいいます。
また,遊休資産の売却による現金での収入も,リターンの一種とみなして考えます。
投資効果測定は,投資総額とリターンの総額の関係において,リターンが投資元本をカバーし,かつ資本コストを上回るか否かで測定されます。
別の言い方をしますと,資本コストと投資元本の額を上回る収入が現金で発生して,初めて投資が成功したといえるのです。
簡単な例で考えてみましょう。
ここに銀行から年5%で借りたお金が100万円手元にあり,この投資先を検討しているとします。
仮に,ここに毎年5万円のクーポン付きで額面100万円, 3年後償還のA社社債が額面と同じ金額で発売されていたとします。
この社債に投資すれば,投資とリターンの関係が損益分岐点に位置し,損も儲けもないことになります。
つまり毎年の現金によるクーポン収入(5万円)を銀行借入金利(5万円)の支払に充て, 3年後の社債償還時に手元に現金で入る100万円を銀行借入の返済に充てれば,すべてが精算されて損も得もないということです。
しかし,この社債が80万円で購入できれば,手元に残った20万円分は儲けとなり,他の投資に回すことができます。
この場合, 80万円の投資利回りは年複利で約14%に該当します(表1-1)。
そして残った20万円も同じ投資利回りの金融商品に投資したとすれば, 3年後には約30万円となり,これはまるまる儲けとなります。
以上のように投資とは,現金で流出する支出です。
企業であれば,将来の事業発展向けの工場建設であったり,新製品開発であり,個人であれば株式や社債の購入のことです。
一方投資には,必ず資本コストがついて回り,投資元本と資本コストを賄う現金での収入がリターンと定義されます。
キャッシュフローとは何か キャッシュフローとは,現金(お金)の流れのことであり,お金の出(アウト)と入り(イン)のことです。
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